特別管理産業廃棄物運搬
特別管理産業廃棄物は、排出時点から他の産業廃棄物とは区別した対処が必要です。廃棄物の性状等に適した分別・保管や収集運搬又は処分を行うなど適正に処理しなければなりません。特別管理産業廃棄物の収集運搬につきましては、「特別管理産業廃棄物の収集運搬基準」に定められており、これらの規定を遵守しなければなりません。
以下、特別管理産業廃棄物収集運搬における共通基準並びに感染性廃棄物、廃石綿等、PCB廃棄物及びその他の特別管理産業廃棄物に特有の収集運搬(積替保管を含む)のあり方についてご説明します。
特別管理産業廃棄物に共通する収取運搬・積替保管基準
特別管理産業廃棄物以外の産業廃棄物に適用される基準や取扱い上の注意点は、特別管理産業廃棄物にも適用されます。共通する主な収集運搬(積替保管を含む)基準(以下、「共通基準」という)については次のとおりです。
①特別管理産業廃棄物がその他の物と混合するおそれのないように、他の物と区別して収集し、又は運搬します。
②収集運搬を行うものは、その収集運搬に係る特別管理産業廃棄物の種類や取り扱う際に注意すべき事項を記載した文書を携帯します。ただし、特別管理産業廃棄物を収納した運搬容器にそれら事項が表示されている場合は、その文書を携帯する必要はありません。
③積替保管基準は、特別管理産業廃棄物以外の廃棄物以外の産業廃棄物と異なった規定はありませんが、特別管理産業廃棄物は特別管理産業廃棄物以外の産業廃棄物以上に取扱に注意を要する性状のものだけに、生活環境保全上の支障のおそれがないよう、配慮が必要です。
感染性廃棄物の収集運搬
感染性廃棄物の取扱いで特に注意を払わなければならないことは、感染性廃棄物からの二次感染です。感染性廃棄物の収集運搬は、特別管理産業廃棄物収集運搬基準に従って行わなければなりません。また、平成21年5月に改定された「感染性廃棄物マニュアル」には、法に従った適正な処理を確保するための具体的な基準が解説されています。以下、感染性廃棄物に特有の収集運搬のあり方をご説明します。
(1)収集運搬の方法
感染性廃棄物の収取運搬は、共通基準に従うとともに、以下のように行う必要があります。
1)他の廃棄物との混載禁止
感染性廃棄物の運搬に当たっても、他の廃棄物と混載しない。ただし、感染性廃棄物と同時に生ずる他の廃棄物と同等の扱いをする場合は、この限りではありません。
2)処分施設への直送の原則
感染性廃棄物は、その性状から、原則として、収集後、直接焼却施設や溶融施設へ運搬します。
3)飛散防止
感染性廃棄物は、運搬途中で内容物が飛散・流出しないよう、医療関係機関においてあらかじめ運搬容器に入れて密閉されなければなりません。感染性廃棄物は、必ず運搬容器に収納したまま収集運搬しなければなりません。
4)運搬車両
収集運搬車両は、感染性廃棄物の運搬容器が車両より落下し、及び悪臭が漏れるおそれがない構造を有するものでなければなりません。
①屋根が付いたボックスタイプのもの
②荷台に覆いを設けるなどの措置が講じられたもの
③屋根や覆いのない運搬車両を使用する場合、容器は雨水による影響を受けないもの
なお、感染性廃棄物の収集運搬基準では「保冷車その他の運搬施設を有すること」と規定されています。
廃石綿等の収集運搬
廃石綿等において特に注意を払わなければならないことは、「飛散防止」です。特別管理産業廃棄物である廃石綿等の収集運搬は、廃棄物処理法施行令第6条の5第1項第1号に従って行わなければなりません。また、「石綿含有廃棄物等処理マニュアル」には、法に従った適正な処理を確保するための具体的な手順が解説されています。以下、廃石綿等に特有の収集運搬のあり方をご説明します。
(1)収集運搬の方法
廃石綿等の収集運搬は、共通基準に従うとともに、以下のように行う必要があります。
1)他の廃棄物との混載禁止
廃石綿等の収集運搬に当たっては、他の廃棄物と混合するおそれのないように、他の物と区分して収集運搬し、他の廃棄物と同一の車両に混載してはなりません。混載した場合は、他の廃棄物も石綿として取り扱わなければなりません。
2)飛散防止
廃石綿等の収集運搬に当たっては、廃石綿等を収納したプラスチック袋の破損等により石綿を飛散させないよう慎重に取り扱わなければなりません。プラスチック袋等の積込みは、原則として人力で行います。また、重機を利用する場合には、パレット等を利用し、重機が直接プラスチック袋に触れないようにします。なお、プラスチック袋等の破損により、石綿の飛散の恐れが生じた場合には、速やかに散水等を行い湿潤化させ、又は覆いをかけるなどの飛散防止措置を行い、新たに二重のプラスチック袋等の耐水性の材料で梱包します。
3)運搬車両
廃石綿等の運搬に当たっては、運搬車両の荷台に覆いをかけなければなりません。プラスチック袋等の場合には、破損のないシート等でプラスチック袋を包み込むように覆いをかけます。コンクリート等固形物をプラスチック袋に入れたものは、運搬途中の移動、店頭により袋が破損し内容クッション材等の措置を講じます。また、容器の場合には、運搬の際に荷台での転倒、移動を防ぐための措置を講じます。なお、運搬時にプラスチック袋等の破損が生じた車両のシート等は、廃石綿等として処理します。また、荷卸し後、荷台等の清掃を確実に行います。なお、廃石綿等は積替保管を行わずに、処理施設に迅速に直送することが原則です。
PCB廃棄物の収集運搬
PCB廃棄物において特に注意を払わなければならないことは、「漏洩」防止です。平成23年8月に改定された「PCB廃棄物収集運搬ガイドライン」には、廃棄物処理法その他の関係法令に定められているPCB廃棄物の収集運搬基準等を遵守するために必要な技術的方法や留意事項が取りまとめられています。以下にPCB廃棄物特有の収集運搬についてご説明します。
(1)収集運搬の方法
PCB廃棄物の収集運搬は、基準に従うとともに、以下のように行う必要があります。
1)基本事項
①雨水の浸透を防ぐための被覆等の措置を講じる。
②みだりに転倒させ、落下させ、衝撃を加え、又は引きずる等の粗暴な行為をしない。
2)漏洩の点検、漏洩防止措置
事前調査時、積込み時、運搬時、積替え時、積み下ろし時時において、PCB廃棄物の漏洩の有無を点検し、必要な漏洩防止措置を講ずる。
(2)運搬容器
1)運搬容器の基準
PCB廃棄物の収集運搬を行う場合は、運搬容器に収納して行うこととし、運搬容器は以下のとおりとします。
①密閉できること。その他のPCB廃棄物の漏洩を防止するために必要な措置が講じられていること。
②収納しやすいこと。
③損傷しにくいこと。
また労働安全衛生法、消防法等関係法令の基準に適合していること及び所要の検査に合格したものでなければなりません。
液状の特別管理産業廃棄物の収集運搬
液状廃棄物の運搬は、漏れやすい、回収困難といった特性を持っており、以下に示すように固形状廃棄物とは異なった液状物特有の配慮が必要です。中でも特別管理産業廃棄物は、流出等の事故を起こすと、環境や社会への影響が大きいため、十分な知識と配慮の行き届いた運用が求められます。
①保管、運搬中のタンクや容器からの漏洩防止に関する配慮
・容器蓋の確実な密閉確認やパッキン等の劣化前の交換
・廃液に適合した材質の容器やホース、パッキン類等の選定
・容器等の適切な取扱いと亀裂、破損等の確認修理
・雨水等による容器の腐食や内容物の変質等の原因となる長期保管を行わない
②液状運送時の車両特製の変化への配慮
・急ブレーキや急加速をすると廃液が前後に移動するため、車両が液の動揺の影響で運転手の意図と異なる動きをすることによって、事故発生の可能性が増大する
・急カーブすると、遠心力で廃液が外側に偏るため、更に転倒の可能性が高くなる
③ドラム缶等に廃液を収納する場合、上部に空間を設けないなど、温度変化による廃液の膨張を吸収するための配慮を怠ると、廃液の膨張によって容器に大きな力が掛かり、変形、破損するおそれがある。
④液状の特別管理産業廃棄物は、移動の際の衝撃で容器が破損すると、漏れや流出による重大事故につながるので、容器の衝撃防止・転倒防止策を講じておく必要がある。
(1)強酸・強アルカリの収集運搬
廃酸については、pH2.0以下、廃アルカリについてはpH12.5以上(強アルカリ)が特別管理産業廃棄物に該当します。これらの特徴として、腐食性が強く、液体であるため漏れやすいという性状があります。
1)収取運搬の方法
強酸・強アルカリの収集運搬は、共通基準に従うとともに、強酸・強アルカリは他の性状の物と混ぜ合わせることによって、有害ガスや熱が発生する危険性が高くなることから、混合は原則として行いません。
2)運搬車両
腐食性が強いことから、耐腐食性の材料、コーティングされている機材を用いる必要があります。具体的には、強酸に関しては、プラスチック製の資材やスチール製の場合はゴムライニングされているものが一般的に適しているといわれています。強アルカリに関しては、ステンレス鋼、、FRPの資材やスチール製の場合は、ゴムライニングされている者が一般的には適しているといわれています。ただし、強酸・強アルカリの場合は、他の有害物や特殊な薬剤が溶け込んでいる場合も多いことから、排出事業者と十分に打ち合わせを行い、性状分析表等の情報の提供を受け、あらかじめ実験棟により検証しておくことが重要です。
(2)廃溶剤の収集運搬
トリクロロエチレン等の廃溶剤の一部は、有害性により特別管理産業廃棄物に指定されているものがあります。これらの特徴として、物を溶かす力が強く、浸透性が高く、揮発しやすいという性状があげられます。
1)運搬車両、容器
前述の特徴から、プラスチック製の材料は溶けてしまうおそれがあり不向きです。材質としては、スチール製で開口部が少なく、ふたの部分は耐腐食加工を施したパッキンのついたものが一般的に適しているといわれています。ただし、廃溶剤も強酸・強アルカリの場合と同様に、他の有害物や特殊な溶剤が溶け込んでいる場合も多いことから、排出事業者と十分に打ち合わせを行い、性状分析表等の情報の提供を受け、あらかじめ実験棟により検証しておくことが重要です。
(3)消防法第4類で規定されている危険物を含む特別管理産業廃棄物
消防法における危険物の運搬・移送基準は消防法に規定されています。
有害物質を含有する固形状の特別管理産業廃棄物の収集運搬
鉛、カドミウム等の有害物質を一定以上の割合で含むばいじん、汚泥、燃え殻等は、排出する事業所の形態により、特別管理産業廃棄物に指定されている物があります。
(1)運搬車両、容器
液体に比較すれば、漏えいの可能性は低いが、有害物質を含んでいることから、「飛散、流出」には注意が必要です。また、運搬後に機材、容器に付着して残ることのないよう注意が必要です。これらのことから、ばいじんや燃え殻等は、ばら積みは行わず、フレキシブルコンテナなどに排出下で梱包した状態で搬出し、受け入れ先では、そのままの状態で受け入れができることが望ましいです。含有している有害物の種類や、それを含んでいる媒体(ばいじん、汚泥、燃え殻等)の組み合わせや状態により、そのリスクや、それに対応する機材もケースバイケースとならざるをえない場合が多いです。
排出される状態により容器、機材の特徴や保管上の留意点を総合的に検討し、適した資材を選択することが必要です。なお、これに関しても前出の種々の特別管理産業廃棄物と同様に、排出事業者と十分に打ち合わせを行い、性状分析表等の情報の提供を受け、実験等により検証していくことが重要です。