建設産廃運搬の車両
(特別管理)産業廃棄物は、外観形状より固形状、液状・泥状、粉粒状に分類することができます。
固形状廃棄物の収集運搬車両
固形状廃棄物の収集運搬には、ダンプ車、機械式ごみ収集車、脱着装置付コンテナ専用車等がその状況に応じて、使用されています。
(1)ダンプ車
ダンプ車は、固形状産業廃棄物の収集運搬に多く使用されています。廃棄物の積込みはショベルローダ等の荷役車両で行われます。排出はボディ下部の油圧シリンダを作動させ、ボディを傾倒させて行います。
ダンプ車は土砂ダンプと清掃ダンプ(深ボディダンプ)に大別されます。土砂ダンプは荷台容量が小さく、コンクリート殻のような比重の大きな廃棄物の運搬に用いられます。ちなみに、がれき類は土砂等と同等と規定されていますので、ダンプ車による収集運搬を行う際には土砂ダンプを使用します。
一方、清掃ダンプは、土砂ダンプに比べ荷台容量が大きく、木くずや廃プラスチック類のような比重の小さい廃棄物の運搬に適しています。また、ダンプ車には、車検証に「積載物は土砂等以外のものとする」といった記載がされているものがあります。これは、荷台容量が大きいために、比重の大きなものを積み込むと過積載の恐れがある車両に対する制限であり、例えば、このような車両でがれきを類を運搬した場合は取締りの対象になります。
ダンプ車の運用上特に留意すべきことは、過積載の防止です。過積載を行わないためには、荷台の高さを超えての積載や、さし枠を使用しての積載、本来の運搬目的から外れた比重の大きい廃棄物の積載を行ってはなりません。過積載は、法的に規制されているばかりでなく、次のような弊害をもたらすことを忘れてはいけません。
①ブレーキ能力の低下や積載物の落下等による交通事故の発生
②過負荷による道路の破損
③騒音、振動、排ガス等による沿線環境の悪化
④燃費の悪化
(2)機械式ごみ取集車
機械式ごみ収集車(パッカー車)は、廃プラスチック類や動植物性残さのような密度が低くかさばる固形状の廃棄物を圧縮して積み込み、積載効率を上げて運搬する車両です。この車両は、車体後部に圧縮装置を備えているため、不用意に廃棄物を詰め込むと、過積載につながる恐れがありますので注意が必要です。
積込機構には回転板式と圧縮板式があります。回転板式はホッパに投入された廃棄物を回転板ですくい上げ、押込板でボディ内へ押し込む方式です。圧縮板式は廃棄物を圧縮板(プレス板)によってホッパ底部に押し付け破砕・減容した後、ボディ内へ詰め込む方式で、破砕が必要な廃棄物に適しています。
排出機構はホッパ部を開き、ダンプ排出するダンプ式とボディ内に備えた押出板を油圧シリンダで作動させ、廃棄物を排出する押出式に分類されます。この他、ドラムを回転させることによって、投入した廃棄物を内部の案内板がドラムに押し込む構造の荷箱回転式収集車もあります。
(3)脱着装置付コンテナ専用車等
脱着装置付コンテナ専用車は、「自動車(キャリア)又はコンテナに装備した機械により脱着装着用コンテナを自動車に積卸しできる構造のものであり、かつ、自動車に積載された脱着装着用コンテナを確実に固縛する緊締装置を有する専用自動車」と規定されています。この収集運搬車両は、コンテナが脱着できるため、通常の1台のキャリアと複数個のコンテナの組み合わせにより、廃棄物の貯留、収集運搬、排出までをシステム化して運用できることに特徴があります。
脱着装置付コンテナ専用車の積載物には、積荷ばかりでなくコンテナも含まれる点に留意が必要です。このため、実積載量(積載可能な廃棄物重量)は、自動車検査証の最大積載量からコンテナ自重を引いたものになり、誤って過積載しないように留意する必要があります。なお、コンテナ自重はコンテナ本体に表示されているのが一般的です。【廃棄物の実積載量=最大積載量―コンテナ自体の重量】となります。
脱着装置付コンテナ専用車と同様、廃棄物の貯留、収集運搬、排出までをシステム化して運用できる車両としてコンテナ水平脱着ボディ車があります。この車両は、コンテナの着脱をコンテナが水平のままで行うことができるため、荷崩れが問題となる廃棄物の運搬に適しています。また、コンテナ以外の積荷の運搬も可能です。
(4)積荷移動装置付運搬車
積荷移動装置付き運搬車は、荷台デッキに設けた積荷移動装置によって廃棄物の積卸を行うもので、ボディを傾斜(ダンプアップ)させることなく廃棄物の排出ができます。この種の車両には、デッキにコンベヤを設けたものやスライド式のレールで構成された機構を設けたスライドレール式等があります。
液状廃棄物の収集運搬車両
液状及び泥状廃棄物(以下、「液状廃棄物」といいます)の収集運搬には、通常、積込み方式として、重力方式、液体ポンプ方式、真空方式、風力方式を用いた車両が用いられています。これらの車両は、主に真空ポンプやブロア、液体ポンプ等を用いパイプラインを利用して廃棄物の積込みを行うものです。
このようなパイプラインを用いた液状廃棄物の積卸では、液状廃棄物の性状や車両と排出場所との位置関係など以下のような項目についての確認が、作業効率や作業の安全性などを左右する重要なポイントの一つになっています。
①液状廃棄物の粘性
②液状廃棄物の安全性(爆発性、引火性、揮発性、腐食性、毒性等)と法規制
③液状廃棄物への異物の混入度合いやその粒度
④吸引距離、吸い込み揚程等の液状廃棄物の所在位置と車両の位置関係
(1)タンクローリ
タンクローリは粘性の低い液状廃棄物の収集運搬に適した車両で、消防法により構造、運用などが規制された危険物運搬用のものや、危険物ではない液状廃棄物の運搬に用いられるものがあります。タンクローリには、積込み方式の違いによって、重力方式、液体ポンプ方式、真空方式に分類されます。また、排出方式として、重力方式、液体ポンプ方式、加圧式があります。
タンクローリで収集運搬する液状廃棄物は性状の把握が難しい場合が多いため、耐用性のある適切な材質や内面処理の選定には十分な検討が必要です。
(2)汚泥吸排車
汚泥吸排車は、タンクの内圧を下げて廃棄物の吸引を行う真空方式を採用しています。粘性の高い廃棄物にも対応できるように、吸引ホースの径を大きくして吸引時の抵抗の軽減を図っており、吸引性能は、揚程6~7m程度です。排出は、積載物の性状に合わせて、後扉開閉によるダンプ排出とタンク加圧によるいずれかを選択できます。
また、運搬効率を上げるため、タンク内で分離した水を排出し固形分の割合を高くして運搬することが可能ですが、固形分の割合が高いと、積載量を超えることも考えられますので、留意する必要があります。
(3)強力吸引車
強力吸引車は風力方式の車両です。これは、大風量のブロワによって吸引管に生じた高速の空気の流れで廃棄物を吸引するものです。このため、液状はもとより泥状物や粒子状の固形物の吸引も可能です。また、この方式は、電気掃除機と同様、空気の流れを利用するもので、10m以上の揚程が必要な作業や遠距離の吸引作業にも対応できます。
(4)水蜜仕様ダンプ車
水蜜仕様ダンプ車は、水蜜性能を向上させ泥状の廃棄物の運搬に適するようにした車両です。ボディ形状は船底型が多く、汚水が漏れないようボディとテールゲートの間にはパッキンが取り付けられています。
粉粒状廃棄物の収集運搬車両
粉粒状廃棄物の収集運搬車両への積込みは、施設側より直接車両へ重力投入されることが多いとされます。そのため、粉粒状の専用運搬車であるバルク車は、排出機能を主体とした車両構造となっています。この排出機構には空気圧送式(エア式)のものと機械式(スクリュー式)のものとがあります。エアバルク車には、エアスライド式、エアアジテーション式等の方式があります。
これらの中で多く使用されているエアスライド式バルク車は、貯留タンク底部に設けたスライドキャンバスの布目から吹き出す加圧空気によって粉粒体を流動化させ、タンク中央部の排出口に集めて排出管より圧送するもので、焼却施設から発生するばいじんのような廃棄物の運搬等に使用されています。
その他の収集運搬車両と荷役機材
(1)平ボディ車
平ボディ車は、物流車両として最も多く使用されています。特に各種の容器に入った廃棄物の収集運搬等に広く用いられています。また、廃棄物の積卸にリフタやトラック・クレーンを装備した車両も使用されています。
(2)バン型車
バン型車は、感染性廃棄物の収集運搬多く用いられています。この車両は密閉構造であるため、臭気の漏れや第三者の荷物室への侵入、事故時の廃棄物の散乱が防止できます。特に保冷車は腐敗の防止と臭気の発散防止対策上でも有効であり、感染性廃棄物の収集運搬基準では「保冷車その他の運搬施設を有すること」と規定されています。また、作業を容易にするため、リフタを取り付けることもあります。
(3)トラック・クレーン
トラック・クレーンは、ダンプ車や平ボディ車等に広く搭載されています。トラック・クレーンはワイヤ式クレーンと屈折式クレーンに大別されます。ワイヤ式クレーンは日本で多く使用されている形式のもので、荷物のつり上げをウインチのワイヤを用いて行う方式のものです。屈折式クレーンはローダ式クレーンとも呼ばれ、人の腕のようにブームの屈折動作によって荷役作業を行います。通常、ブーム先端にアタッチメントを取り付けて荷物(廃棄物)を直接取り扱います。