産廃運搬の法規制
近年、企業のコンプライアンスが強く求められています。コンプライアンスとは、企業が法規制や社会規範を守って事業を行っていくことです。収集運搬業者が(特別管理)産業廃遺物の収集運搬を行っていく上で不可欠な法規制には廃棄物処理法を中心として多くのものがあります。
例えば、危険物に該当する廃油や毒劇物に該当する廃棄物を運搬するには、廃棄物処理法とともに消防法や毒劇法への適合にも配慮する必要があります。当然、収集運搬を行うためには、自動車に関係する法律も遵守する必要があります。このように、事業者は多くの法規制の適用を受ける可能性があり、これらすべての法規制の対象になる法を順守しなければなりません。廃棄物処理法においての法規制違反は、他の産業以上に深刻な結果を引き起こすことも考えられますので、法規制を確実に守っていくための以下のような取り組みが求められています。
①適用される法規制として何があるかを認識する。
②新たな法規制や法改正を必要なタイミングで認識する。
③それらの法規制の法的義務を把握する。
④法的義務をどのように守るか具体的な内容を組織内で周知・徹底する。
5法的義務が守られていることを実績を基に確認する。
以下におきまして、産業廃棄物収集運搬業に特に関連のある法律についてご説明します。
廃棄物処理法及び各種リサイクル法
(特別管理)産業廃棄物収集運搬業者として遵守すべき廃棄物処理法及び各種リサイクル法において特に注意すべき事項は、「産業廃棄物収集運搬業の許可を有していても、それだけでは違法になってしまう廃棄物がある」ということです。
例えば、廃自動車の引取や解体、破砕行為は自動車リサイクル法の許可や登録を行っていなければならない場合もあります。また、収集運搬業者が排出事業者の立場になる形態として、自社で使用していた車両を配車するときがあります。使用済み自動車は、自動車リサイクル法の適用を受け、配車した時は、同法の処理ルートに従い適切に処理しなければなりません。
さらに、(特別管理)産業廃棄物収集運搬に使用される特殊車両の中には、「車体」は自動車リサイクル法の適用を受けるが、「架装物」と呼ばれる架台部分は自動車リサイクル法ではなく、取り外したうえで廃棄物処理法の規定により処理しなければならない部分もありますので、車両メーカー等へ確認し、こちらも適切に処理することが大切です。
産業廃棄物収集・運搬車両の用途区分(特殊、貨物)と緑ナンバー
①用途区分
自動車は、「乗用、乗合、貨物、特殊」の4種類の用途に区分されています。この内、廃棄物の収集運搬車両は、「特殊な目的に専ら使用するための自動車」に区分される特種用途自動車(8ナンバー車)か貨物自動車(1、4ナンバー車)に分類されます。特種用途自動車には、タンク車、塵芥車、清掃車等の車体形状があり、タンクローリーは「タンク車」、機械式ごみ収集車は「塵芥車」、強力吸引車は「清掃車」に分類され、その構造要件は通達で定められています。特種用途自動車の構造要件を満足しない乗用、乗合自動車以外の車両は、貨物自動車に定義され、清掃ダンプや脱着装置付コンテナ専用車等がこれに該当します。
②緑ナンバー
貨物自動車運送業(緑ナンバー)の許可は、(特別管理)産業廃棄物収集運搬業の許可取得の条件ではありませんが、許可を得ている業者もあります。貨物自動車運送事業は、他人、特定の者の需要に応じ、有償で自動車を使用して貨物を運送する事業をいい。一定水準以上の許可基準と運用が求められます。貨物自動車運送事業を行なおうとする者は、その業の種類に応じ、国土交通大臣の許可を受けるか届け出る必要があります。