車両の面から産廃運搬
平成13年に新総合物流大綱が策定され、温室効果ガスの排出抑制策の強化や大都市における粒子状物質(PM)・窒素化合物(Nox)等の環境への対応として、発生源である自動車単体(収集運搬車両を含む)の排出ガス規制の強化、クリーンエネルギー自動車の開発、普及等が推進されています。平成21年の総合物流大綱においても、引き続き環境負荷の低減に向けた取り組みや効率的な静脈物流システムの構築を推進するとしています。
また、自動車NOx-PM法では、新規登場車ばかりでなく現在使用されている車両に対しても規制が適用されるようになりました。これらを受けて、産業廃棄物収集運搬業者は、燃費の優れた収集運搬車両が調達できる反面、減価償却が終了したような古い車両の登録ができなくなりました。これらを含めた車両による収集運搬業を取り巻く主な経営環境の変化は以下のようになります。
車両通行管理システムの導入
従来、産業廃棄物の収集運搬車両の運行管理には、円形の記録用紙に時刻と走行速度を記録するタコグラフが多く用いられていました。最近は、これらの情報を数値化し電子情報として記録するデジタルタコグラフが実用化されています。また、人工衛星を利用し地球上の現在位置を測定するGPS(全地球測位システム)を用いた技術やIT技術、コンピューターによる解析技術等を用い、又は組み合わせることによって、更に多様な情報を得て車両の運行を支援する様々なシステムが開発されています。
これらの運行システムは、産業廃棄物収集運搬車両の走行、停止の状態や位置等の情報を運行管理者側にリアルタイムで表示できるものや、急加減速、瞬間速度、走行距離等の情報を提供できるなど、個々の企業のニーズに合った以下のような支援が可能であるため、物流界に広く導入されています。
1)運行管理の支援
①収集運搬車両に予め登録した場所、距離、時間等を自動的に検知・通知できます。
②管理者側では、入手した情報を基に、スピード違反者リスト、急加減速者リスト、通行実績リストを作成できます。
③取集運搬車両の運転手の集配業務や収集運搬業務を支援できます。
2)エコドライブの支援
①急発進や急加速、必要以上のアイドリング、経済速度を超えた走行等の情報を記録・分析し、運行に活用できる診断結果を出力できます。
②エコドライブからの逸脱を関知し、運転手に警告できます。
3)安全運転の支援
①危険兆候等の記録データを安全評価に活用できます。
②事故多発地域の通過や居眠り運転等の危険な兆候を運転手に警告できます。
一方、産業廃棄物分野では、不法投棄等の不適正処理が未だ後を絶たず、産業廃棄物業界に対する信頼感を低下させています。また、安全運転や収集運搬効率の改善も主な課題の一つになっています。このような状況から、不法投棄防止を含めた車両管理シテムが産業廃棄物業界向けに開発され導入が始まっています。以下に、一般的な車両管理システムの導入事例を含め、産業廃棄物業界における開発や導入の事例を示します。
①T社では、平成13年に「GPSを利用した車両位置管理システム」を採用し、全車両に導入済み
・収集運搬車両の位置情報の把握と適正処理の監視
・道路情報等による顧客応答サービス
②K社とI社は、携帯電話のカメラとGPS機能を用いた「廃棄物の不法投棄システム」を共同開発(平成17年)
③F社は、GPSを利用した「廃棄物管理情報サービス」を実用化
・廃棄物の動態を追跡し、適正処理の遂行確認
・排出事業者は、マニフェスト伝票、廃棄物取引量等の行政への報告書の自動作成
・収集運搬車両の運行管理や運転日報の自動作成
④北九州市では、平成16年12月からPCB廃棄物処理事業の実運用が開始されました。PCB廃棄物の運行管理については、「収集運搬を行う場合には、産廃の収集運搬車ごとにその運行状況を把握することが必要である」とされています。このため、日本環境安全事業(株)では、北九州PCB廃棄物処理施設に係る受入基準において、搬入者(収集運搬業者)にGPSによる運行管理システムの装備と適切な運用を求めており、収集運搬業者は、GPS装置を運搬車に装着し収集運搬を行っています。引き続き平成17年9月以降、豊田事業、東京事業、大阪事業、北海道事業の処理開始とともに、GPSによる運行管理が行われています。
排出ガス規制
1)新短期、新長期及びポスト新長期排出ガス規制
新車に対する自動車1台ごとの排出ガス量に関する規制(単体規制)は、道路運送車両法の保安基準で決められており、排出ガス規制適合の区分ができるように、車両形式の頭部に平成16年規制までは2桁、平成17年規制以降は3桁の識別番号が付いています。このほかに、平成15年規制より各基準値の低減割合によりディーゼル車以外の自動車にも排出ガス規制識別番号がそれぞれ決められています。
平成17年の新長期排出ガス規制は、新短期規制値からNOxdeで40%、PMで85%の削減が義務付けられました。平成21年において、ポスト新長期排出ガス規制は、世界で最も厳しい規制値になりました。さらに、平成21年7月の中央環境審議会において、平成28年頃を目処に、”ポスト・ポスト新長期”のNOx挑戦目標値が「ポスト新長期NOx規制値の1/3程度」と策定されました。
このように、大気汚染を防止するため、自動車排出ガス規制はますます厳しさを増してきており、関連の策定としてCNG車、ハイブリッド車等の低公害車の普及促進が図られています。これは産業廃棄物の収集運搬車両においても同様です。