産業廃棄物処理基準の具体例
法は処理業の許可を受けた者は、事業者が行う収集、運搬及び処分と同様の基準(産業廃棄物処理基準、特別管理産業廃棄物にあっては特別管理産業廃棄物処理基準)に従い、(特別管理)産業廃棄物を収集、運搬又は処分しなければならないと規定しています。次に産業廃棄物の例を具体的に説明します。
①「産業廃棄物が飛散し及び流出し並びに悪臭が漏れるおそれのないようにすること」と規定されており、次のような場合には処理基準違反となる場合がある。
ア 紙くずや廃プラスチックが収集・運搬途中で車両から飛散するおそれがある。イ 汚泥を運搬する車両から汚水が道路に流出するおそれがある。このような場合は次のような措置が必要である。
・アの場合は、産業廃棄物が飛散しないような容器を使用して運搬する。
・イの場合は、汚水が流出しないように密閉容器等を利用したり、タンク車等の専用車両を使用して運搬する。
②また、「生活環境の保全上支障が生じないように必要な措置を講ずること」とも規定されており、次のような場合には処理基準違反となります。
ア がれき類を保管している中間処理施設から、重機を使用して作業中に塀を超えて粉じんが飛散し、中間処理施設の周辺に堆積している。
イ 収集・運搬業者の設置する積替保管施設から、汚水が施設外に流出し悪臭が発生している。
ウ 中間処理施設において、産業廃棄物である廃プラスチック類を処分する際、廃プラスチック類に残っていた有機性汚水が施設内に滞留、腐敗して悪臭が発生している。
エ 中間処理施設へ産業廃棄物を搬入する車両が、中間処理施設内に駐車場がないため何台も公道に駐車しており、当該自動車からの排ガス、振動騒音により周辺住民は窓も開けられない状態になっている。
上記の場合には次のような措置が必要です。
・アの場合は、粉じんが飛散しないように散水施設を設置したり、粉じんが超えないような適正な高さを有する塀を設置する、又はがれき類の上で重機により作業を行っても、当該作業に伴う粉じんが塀を超えない程度の高さにがれき類を積む。
・イの場合は、施設の床をコンクリート等の地下に浸透しない材料で被覆するとともに、汚水を集める側溝設置し、水処理設備へ排出して処理する。
・ウの場合は、高圧高温の洗浄装置等により、施設内等を定期的に洗浄するとともに、汚水を集める側溝を設置し、水処理設備へ排出して処理する。
・エの場合は、中間処理施設内に必要な台数分の駐車場を設置し、公道に搬入車両が駐車しないようにするとともに、中間施設内においても、アイドリングストップを励行する。
次に実際に積替保管施設又は中間処理施設を設置しようとする場合にどのようなことが必要か設置例をあげると次のとおりです。
積替保管施設の設置例
設置例は一般的な積替保管施設を想定したものです。
①周囲に囲いが設けてあり、人がみだりに立入できないようなものであると同時に産業廃棄物が敷地外に飛散又は流出し、悪臭が発生することのない構造になっている。実際、人が簡単に立ち入りできる囲いであったため、敷地内への産業廃棄物の投棄や放火等の事件も発生している(搬出入口についても同様な配慮が必要である)。
②積替保管施設の見やすい場所に掲示板を設置している。
③屋外で密閉容器を用いず雨水がかかる場合は、産業廃棄物の種類によっては汚水が発生するので、当該汚水が敷地外に流出しないように敷地の床面をコンクリートで舗装するとともに、汚水用側溝などを設置して汚水を集水している。また、産業廃棄物の種類によっては、汚水用側溝等へ油が流れることも考えられるので、当該油を除去できるオイルトラップを設置している。
④搬出入時には、運搬量を確認することが必要なため、産業廃棄物に重量を計量できる台貫等を設置している。
⑤搬入車両が積替保管を行っている場合に、公道に車両が駐車することの無いように、必要な台数分の駐車場を確保している。
⑥産業廃棄物の種類によっては、搬入後車両及び運搬容器の洗浄が必要な場合があるので、洗車場を設置している。
⑦有機物の付着した産業廃棄物にあっては、悪臭が発生するので、保管場所や運搬容器等を定期的に洗浄するために、高圧高温の洗浄機を設置している。
⑧保管場所については、産業廃棄物が飛散しないように擁壁で囲むとともに散水装置を設置している。
⑨「屋外で容器を設置しない場合の産業廃棄物の保管高さ」については、「産業廃棄物の処理基準」による。
中間処理施設の設置例
設置例は、破砕施設を想定しています。
①周囲に囲いが設けてあり、人がみだりに立入できないできないようなものであると同時に、産業廃棄物が敷地外に飛び出し、飛散又は流出し、悪臭が発生することのない構造になっている。
②中間処理に伴い産業廃棄物の保管を行うため、施設の見やすい箇所に保管場所としての掲示板を設置している。都道府県によっては、保管場所としての掲示のほか、中間処理施設としての掲示板を設置するよう指導している場合がある。
③収集・運搬課程で安定型産業廃棄物以外の産業廃棄物と接触した産業廃棄物については、管理型の産業廃棄物として取り扱うことが必要なため、雨水がかかった場合には汚水が発生することを考慮して、当該汚水が敷地外に流出しないように敷地の床面をコンクリートで舗装するとともに、汚水側溝等を設置して集水している。また、産業廃棄物の種類によってはそのまま汚水を下水に放流できない場合もあるので、当該汚水に適した排水処理施設等を設置している。
⑤公道に搬入車両等が駐車することのないように、必要台数分の駐車場を確保している。
⑥産業廃棄物の種類によっては、搬入後車両及び運搬容器の洗浄が必要な場合もあるので、洗車場を設置している。
⑦有機物の付着した産業廃棄物にあっては、悪臭が発生するので、施設の床、運搬容器等を定期的に洗浄するために、高圧高温の洗浄機を設置している。
⑧破砕機の設置場所については、騒音が施設外に漏洩しないよう防音室に設置している。また、防音室への車両の出入り口は二重扉を採用して、車両の出入り時における騒音の外部への漏洩を防止している。
⑨破砕機については振動を防止するため、防振ゴムを設置している。
⑩破砕機から発生した粉じんを吸収するため、集じん装置を設置している。
⑪破砕後の産業廃棄物を保管場所に移動するベルトコンベヤについては、破砕後の産業廃棄物が飛散しないようにカバーを設置している。
⑫保管場所については、産業廃棄物が飛散しないように擁壁で囲むとともに散水装置を設置している。
⑬「屋外で容器を使用せずに産業廃棄物を保管する場合の高さ」については、積替保管施設の例と同様に「産業廃棄物の処理基準」による。
⑭特別管理産業廃棄物のうち廃油、汚泥等を取り扱う処分業者にあっては、当該特別管理産業廃棄物の性状を分析する設備が必要であり、かつ、分析者が必要である。なお、分析者の資格は、保有資格等と実務経験による。