建設業と産業廃棄物
処理責任の所在が曖昧な構造
建設業は、建設工事現場に元請業者、一次下請業者、二次下請業者等が存在し、排出された個々の廃棄物について実際に排出した事業者を特定することは困難な場合もあり、その処理責任の所在が曖昧になりやすい、という構造にあります。従来から、原則として元請業者が排出事業者となることが「建設行為から生じる産業廃棄物の処理に係る留意について」(平成6年衛産第82号通知)において示されていました。しかし、同通知でも、一定の条件の下では下請業者も排出業者となる場合がある、とされていました。このため、都道府県知事等が行政指導及び行政処分を行う相手が不明確となり、これらの廃棄物の適正処理を確保するための措置を、適切に執行することができないという問題が生じており、これが、今なお多く発生している建設系廃棄物の不法投棄の一つの要因になっています。
このため、平成22年法改正によって、建設工事に伴い生ずる廃棄物については、注文者から直接工事を請け負った建設業者(元請業者)を事業者とすることが規定されました。したがって、当該工事から生ずる廃棄物全体について、元請業者が、排出事業者として処理責任を負うこととなり、元請業者から請け負って個別の工事を行っている下請業者(「下請負人」)は、排出業者となれず、廃棄物処理業の許可を有して元請業者から違法な委託を受けた場合にのみ廃棄物処理業を行うことが可能になります。
ただし、例外としてごく少量の廃棄物の運搬など一定の条件の下に行われる下請負人が自ら行う廃棄物の運搬については、下請負人は廃棄物収集運搬業の許可なく運搬することができます。その条件の主なものにつきまして、以下に示します。
(1)維持修繕または瑕疵の補修であって、請負代金が500万円以下の工事に伴い生ずる廃棄物であること。
(2)1回あたりの運搬量が、1㎥以下で元請業者の保管又は処理施設に運搬されるものであること
また、排出事業者でも廃棄物処理業者でもない下請負人に対しては廃棄物処理法事情の規制が課せられないこととなるため、不適正処理を助長しないよう改めて必要な規制を課しています。
(1)下請負人による建設工事現場内での保管については、保管を行う下請負人もまた事業者とみなして、保管基準等が適用されその守秘義 務があります。
(2)下請負人が廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、下請負人に委託基準及びマニフェストを交付する義務を適用し、廃棄物処理法の規定に基づく適正な処理が確保されるように措置します。